イベントレポート
Aプロジェクトシンポジウム
「テクトニクスの現在形ーー新しい建築の風」
イベントレポートー【5】
質疑応答
質問
中川さんにお伺いしたいです。建築の模型は抽象化することだと思うのですが、中川さんはジオラマくらいつくり込んでいます。模型をつくる時、何をどこまでつくるか、どういう線引きをしていますか。
中川
まず、プロジェクトごとに周辺模型をどこまでつくるかは変えています。周辺をどの範囲までつくるかというジャッジが、どの辺りまでを建築と考えるかという目標値になると思っています。その場所に行ったことがない人もその場の空気感を想定できる程度はつくろうとしているのかもしれません。そのうえで、たとえば桃山ハウスは自然が豊かな場所なのでエレメントを詳細に表現しようと、複数の素材・テクスチャを組み合わせてつくっていますが、最近つくった模型は、前面道路33mに対して敷地は28平米と小さい場所で、そのスケールの横断を捉えたかったので単一の素材でつくりました。ただし、素材は単一でも、電柱や標識、家々のポストや表札、植え込みなど、身体性を感じさせる都市のエレメンツもつくりこんでいます。
質問
お二人にお伺いしたいのですが、動性やヴァナキュラーな微差をつくることをバラバラにしたり、ずらしをしていると思うのですが、僕はそろえることに意識が向いてしまいます。最終的に建築に定着していくこと・着地点をどうやって決めていますか。
稲垣
まずは、秩序だったものに対する美学が基調をなしていると思います。それに対して、崩しや破れをつくりたいと思っています。イレギュラーもの自体の秩序、不連続統一体的につくりたいと思っています。崩したものがどのような状態をつくろうとしているかをプロジェクトごとに発見したいと思っていますので、崩した極地に行きたいとは思っていないです。
中川
山道さんが今日のシンポジウムの冒頭で、バランスがおかしい建築の話をされていましたが、全部のバランスがおかしいと、おかしいことに気付かないと思うのです。安定しているところがあるから、バランスがおかしいものが際立つ。桃山ハウスも、そもそも大屋根でまとめるというのはオーセンティックな方法かもしれないし、実はお風呂場はタイルの目地が揃っています。つまり、乗るところ・反るところを混ぜることを意識しています。全部バラバラだと単に場当たり的なだけになってしまうので、ルールにのせる・はみだすという両方をつくるのです。
大島
今日は、山道さんから「ありきたりのテーマではなく、これから自分たちがやりたいテーマにしたい」という提案があり、タイトルが難解だったのですが、若い建築家たちと柔軟で新鮮な時間を共有できたと思います。今日はありがとうございました。
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