都市部の住まいにおいて、みんなで集まるためのひとつの広い空間を確保しようとする方法は、それ以外の空間を犠牲にし、結果的には孤立をも際立たせてきたように思います。代わりに、より断片化した空間の集まりが、曖昧な領域の中に漂い、思いおもいに居場所を見つけながら生活できるような状態を考えてみました。
旗竿地でありながら地上階で主に過ごしたい、というお施主さんの意向から、外周に通路を設けることで閉塞感を軽減し、常に先へと空間が続くようにすることで、表側裏側や機能によるヒエアルキーの差を無くそうとしています。回転型の舞台セットのように、十字型の壁によって隔てられた4つの異なる空間が、通路ごしに展開し、多様な居場所を結んでいます。
躯体としては、二つの田の字型のフレームをズらしながら重ねることで、地上階ではその重なりが十字型のコア的な要素となり、耐力の確保や設備配線および配管に使用しています。2階では、1階通路の反転として、外周に収納ボリュームや吹き抜け空間を設けることで、近接する周辺住居から距離を確保しつつ、地上階へと光を落とすよう計画しています。